【8点】「WOOD JOB ! ~神去なあなあ日常~」~チャラ男日本人の原風景と出会う~
高校を卒業したものの将来について何の展望も持たず、進学も就職も決まらず宙ぶらりんの都会っ子(染谷翔太)が、ふと目にしたパンフレットの女の子(長澤まさみ)に会いたい一心で林業の研修制度に応募し、1年間住み込みで見習いとして働くことになりました。
そこは三重県の山奥、神去村(かむさりむら)。軽い気持ちでやってきた若者を待ち受けていたのは、一歩間違えば命を落とすやもしれぬハードな山の洗礼でした。
勇気(役染谷翔太)のチャラ男ぶり
原作は主人公平野勇気のテンポの良いモノローグで綴られていて、今どきの若者言葉が笑いのツボを押さえニマニマしながらもグイグイ読ませてくれるのですが、映画ではその雰囲気を染谷翔太君が全身で表現してくれています。本当に絵に描いたようなチャラ男ぶりで、そいつが日本古来の土着文化を残す山の暮らしの魅力に取り憑かれていくのです。
いえ実は、途中で脱走を試みたのですが、パンフレットの女の子(長澤まさみ)に出会ったため引き返したのですけどね。
山男ヨキ(伊藤英明)の男ぶり
林業に携わる男のたくましさをいかんなく発揮しているのが伊藤英明さんです。登場するやいなや洟を飛ばす仕草に度肝を抜かれました。伐倒する木に斧を入れる様、高い木に登ってロープで体を支えながら枝を払う様、チェーンソーを使う様、まさに山男になりきっています。
へたれの勇気を豪快にしごきながら山で生きることの魅力を教えるのも彼です。
「スローライフ研究会(だったかな)」と称する都会の学生たちが山の暮らしを見学しにやってくる場面がありました。始めは一緒になってチャラチャラしていた勇気でしたが、しまいには彼らを追い払ってしまいます。
原作にはない場面でしたが、かもしだされる違和感と勇気の心境の変化を巧みに伝えていて見事でした。
山の子供たち、大人たち
さらに映画では子供たちが自然な味を出してくれています。特に勇気との絡みが絶妙です。
勇気が村人の一員として認められるきっかけを作ってくれたのも子供たちでした。
勇気は神隠しにあった子供を助けたことで、村の大祭に参加することを許されます。
48年に1回行われるその大祭こそ、この村の秘中の秘の儀式でした。
さあ話はいよいよ日本昔話の世界に突入していきます。
神が宿る山から大木を切り出し山裾へ運ぶこの秘儀は、たいへんな危険を伴う儀式で、この映画のクライマックスです。そこで見せてくれた勇気の活躍とは?!
神様と共に暮らすということ
山の暮らしは厳しく、命のやりとりは日常茶飯事です。
そのせいか村人たちは大概のことは「なあなあ」で済ませてしまいます。
「なあなあ」とは「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」「いいお天気で」というようなニュアンスの言葉で、神去村の人たちの口癖です。
山は危険なこともたくさんあるけれど、豊かな恵みも与えてくれます。そんな山や川やそこに生える木々を神として崇め大切にして暮らす生活に、勇気はすっかり魅せられてしまったようです。
1年の研修が終わり、村を去ることになった勇気。
みんなに別れを告げ、都会の実家の玄関までやってきますが、ーーーそう、再び神去村行きの電車に乗っているのでした。
その後の勇気と山の人々の暮らしが知りたい人は、「神去なあなあ夜話」を読んでみてください。神去村のさらなる秘密と、勇気の恋の顛末が明かされます。「夜話」ですからオ・ト・ナな話も満載なので、その点はご注意を。
この記事を書いた人
- 映画を見たり、本を読んだり、音楽を聴いて気ままに暮らし、ときどきこうしてレビューなんぞが書けたら最高。酸いも甘いもかみ分けた大人のレビューが書けるといいなあ。
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