「思い出のマーニー」~この世に受け入れられること~
「この世には目に見えない魔法の輪がある。輪には内側と外側があって、私は外側の人間」だと思っている主人公アンナは、ティーンエイジの入り口に立つ女の子。
「おばさん」と呼ぶ養母に育てられているけれど、養育費の支給を受けていることを隠している「おばさん」の愛情を、素直に受け入れられないでいます。
心配性の「おばさん」は、やせっぽちで喘息持ちのアンナを親戚の夫婦が住む入り江の町へ転地療養に送り出します。物語はそのシーンから。
藁にもすがる思いで涙ぐみながら見送る「おばさん」に、アンナはぶっきらぼうな顔しかできないのです。
アンナはなぜ「自分が嫌い」なのか?
自分をぽんと押し出して受け入れてもらうことができない。
人の好意を素直に受け入れられないのは、裏切られたときのショックが大きいから。
だから親切にしてくれた子にも「太っちょ豚」なんて言葉を投げつけ、偽悪的に振る舞ってしまう。
ひりひりするほどせつない主人公の胸の内が伝わってきます。
それはアンナの成育歴と関係があるようです。
幼くして身寄りのすべてを失ったアンナは、ホームを経て「おばさん」に預けられました。
心配性の「おばさん」はアンナに対してまるで腫れ物にさわるようです。
そんなこんなで、アンナは輪の内側に入れない自分が嫌いなのです。
アンナはどのように変わっていったのか?
きっかけは「湿地屋敷」に住むマーニーとの出会いでした。
孤独だった二人は磁石がくっつくように仲良くなり、夜ごとの逢瀬を楽しむようになります。
ボーイッシュなアンナと金髪のお姫様のようなマーニー。
それは夢の中のようでもあり、そうでないようでもあり。
アンナは「人を好きになること」を知るのです。
同性の友を得ることが、人をどれほど成長させることか。
特にこの年代において。「好きになる」ということは「許すこと」
やがてアンナのもとから去らなければならなくなったマーニーを、アンナは許し「大好きよ」と叫びます。
もうひとつアンナを育ててくれたのは、親戚夫婦の飾らない愛情です。
地元の人たちとうまく折り合えなくても、夜ごと家を抜け出し外で倒れているところをかつぎこまれても、変わらぬ愛情で包んでくれるのです。
アンナは自分が無条件に受け入れられていることを少しずつ実感していきます。
そして大団円へ
物語後半は、マーニーの秘密が明かされていきます。
「湿地屋敷」に引っ越してきた女の子と仲良くなったアンナは、そこに残されていた日記のよってマーニーの正体を知ります。
アンナは時空を超えてマーニーに愛されていたことを知るのです。
心も体も成長したアンナは、「おばさん」にお金の問題をきちんと説明してもらい、打ち解けて話せるようになり、物語は終息します。人は自分を無条件に受け入れてくれる愛情に包まれてこそ成長できると言えるでしょう。
どうか親世代は、それを子どもたちに確信させてやってほしいと思います。
でも、不幸にしてそのような確信が得られない境遇に生まれたとしても、どこかに自分を受け入れてくれる人はきっといる。それを信じて生きましょう。
そんなメッセージがこの映画から聞こえてきます。
それにしても、今回も祖母から孫への物語でした。
親世代の不在、あるいはだらしなさがジブリ映画の共通項のようですね。
子守り代わりにジブリのDVDを見せている親世代は、ここにとんでもない皮肉が込められていることに気づいた方がよいようです。
主演キャスト
西村義明
高月彩良
有村架純
松嶋菜々子
寺島進 他
主演キャスト
この記事を書いた人
- 映画を見たり、本を読んだり、音楽を聴いて気ままに暮らし、ときどきこうしてレビューなんぞが書けたら最高。酸いも甘いもかみ分けた大人のレビューが書けるといいなあ。
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