「ウルフ・オブ・ウォールストリート」~ディカプリオ祭りその3~
ディカプリオ演じるジョーダン・ベルフォードは実在の人物。彼の回想録をマーティン・スコセッシ監督が映画化したものです。3時間に及ぶ超大作ですが、大作感はありません。全編乱痴気騒ぎに彩られ、その中心で吼えまくっているのがディカプリオです。
この非日常的乱痴気騒ぎが日常と化してしまえば、観ている方も慣れてしまうのが怖い所。過激な描写にも思わず笑いが漏れてしまいます。3時間ほぼ出ずっぱりのディカプリオは、実に活き活きとウォール街の”ウルフ”を演じきっています。
資本主義のなれの果て
資本主義の終焉が巷でささやかれ始めています。行き着く所まで来てしまったというのですが、この映画を観るともうすっかり腐臭を放っていると感じます。
それでも人間の欲望は果てしないもの。あの手この手で市場を確保し、マネーゲームはしばらく続きそうです。
思えば1920年代を舞台にした『グレート・ギャツビー』で、語り手のニック・キャラウェイが勤めていたのがニューヨークの証券会社でした。大学を出た中流家庭の優秀な息子が就職する先として、それはとてもスマートなイメージの場所でした。
それを根こそぎぶち壊したのがこの映画と言えましょう。ジョーダン・ベルフォードがウォール街に登場するのは1980年代後半。日本もバブルに踊っていた頃でした。
1998年、ジョーダン・ベルフォードは証券詐欺と資金洗浄により起訴され、服役します。
果てしない欲望
ジョーダン・ベルフォードは何かを作るわけではありません。人に褒められるようなことは何ひとつしていません。ただ巧みな話術で人を酔わせ、財布のひもを緩ませるのが得意なのです。そうして集めたお金はさらなる大金を生み、彼をカリスマへと育てました。
ひとつ印象的なエピソードがありました。
いよいよ彼の会社が株式上場するという日、ひとりの社員が金魚鉢の掃除をしているのを見とがめます。「今日と言うハレの日になんでそんなことをしているんだ」というわけです。
それを見た副社長で盟友のドニーが金魚を口に入れ食べてみせます。周りの社員達はドニーに拍手喝采し、金魚鉢を拭いていた社員には物を投げつけるのです。
「お金に群がる」とはこういうことなのだと、端的に描いてくれるシーンです。
人生は続く
服役したジョーダン・ベルフォードはそこでもお金にものを言わせ、優雅にテニスなどをして過ごします。
お金にできないことはない、ということらしいのですが。(アメリカって・・・)
出所後彼は回想録を出版し、各地を講演して回っています。この映画の版権などでさぞやまたがっぽり儲けたことでしょう。
さてあなたは彼のこの生き方をうらやましいと思いますか?
思い切りやりたいことをやって駆け抜けるのも気持ちいいでしょうが、お行儀が悪すぎてひんしゅくを買うことは間違いなしです。
キャスト
レオナルド・ディカプリオ
ジョナ・ヒル
マーゴット・ロビー
この記事を書いた人
- 映画を見たり、本を読んだり、音楽を聴いて気ままに暮らし、ときどきこうしてレビューなんぞが書けたら最高。酸いも甘いもかみ分けた大人のレビューが書けるといいなあ。
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