【8点】「イコライザー」はスタイリッシュなアクションがかっこいい

イコライザー

元はテレビドラマだった「イコライザー」

日本では90年代に深夜枠で放映された「ザ・シークレット・ハンター」というテレビ・シリーズがあった。
元CIAのエージェントが過去の罪を償うために困っている人々を助けるという話。主演がどんなシーンでも眉間に縦皺が入る、イギリス版天地茂ことエドワード・ウッドワードなのものだから、敵を倒す方法が不意を突いたり、だまし討ちだったりと、かなり卑劣で清々しさのかけらもないところが、逆にリアルで面白かった記憶がある。
その「ザ・シークレット・ハンター」がデンゼル・ワシントン主演で映画化されるというのを聞いた時は、ちょっと意外に思った。
デンゼル・ワシントンといえば、良くも悪くも知性的で真面目な役のイメージが強くて、問答無用で悪を倒す凄腕のスパイというスティーヴン・セガールかアーノルド・シュワルツェネッガーがやりそうな役とあまり結びつかなかったのだ。

主役のイメージを変えた映画版

で、その映画「イコライザー」を見たら、さすがデンゼル・ワシントンだった。
現役引退したスパイというと「RED/レッド」のブルース・ウィリスのように、年金をあてにして好き勝手なことをしていてもいいのに、この映画の主人公は毎日ホームセンターで働いている。
たぶん、遅刻も欠勤もしないし、就業態度も真面目そのもの、同僚からも信頼されている、そういう模範社員なのだろう。
帰宅後は行きつけのダイナーでお湯をもらってハーブティーかなにかを飲みながら「老人と海」とか「ドン・キホーテ」のような古今の名作を読みふける。
前半は、そういうデンゼル・ワシントンにぴったりのくそ真面目なホームセンター従業員のストイックな生活ぶりが描かれて、セガールならもう10人は絞めてるよな、と「沈黙」シリーズが懐かしくなったころに、ダイナーの常連の若い娼婦が元締めのロシアン・マフィアに手ひどく痛めつけられたのを機に実力を発揮して、マフィアの組織に殴り込む。
この娼婦役のクロエ・グレース・モレッツが、役作りで10ポンド以上体重を増やしたというのだが、久々にグラマーという言葉を思い出したほど肉感的。
中年のおっさんには、モデル体型よりもこういうムチムチの方が一肌脱ぐかという気になるだろうなという説得力がある。

バカ・アクションとは一線を画す描写がいい

ここからはもうデンゼル無双。
そこらにある道具やホームセンターの商品を使って、次々にやって来るロシアン・マフィアを退治していく。敵もどんどんエスカレートしていって、最後には元スペツナズのエリートが完全武装で挑んでくる。
敵がアサルト・ライフルで撃ってきても、そこらにある工具やなにかで倒すあたりはスタイリッシュで、これを見た日本人の10人に9人は「あ、必殺だ」と思うだろう。
最後は、どこまで強いんだというところまでいってしまって、「沈黙の戦艦」の地上最強のコック、ケイシー・ライバックと並ぶ地上最強のホームセンター従業員マッコール誕生というところなのだが、決して無敵ではなく、ちゃんと手傷を負ってしまうところがいい。
さらにいいのは、それをハチミツやドアノブといったそこらにあるもので手当するところで、受けたダメージを回復しながら戦うというのは、この手の無敵アクション映画にはあまりない。こういう細かい部分があるので、バカ・アクションになるギリギリのところで留まっているのだろう。
スーパー・ヒーローに近いアクションものにデンゼル・ワシントンを持ってきたからには、そうでなくてはいけない。

デンゼル無双は痛快のひとこと:8点

監督:アントワーン・フークア
主な出演:デンゼル・ワシントン
マートン・ソーカス
クロエ・グレース・モレッチ
デヴィッド・ハーパー
ビル・プルマン
メリッサ・レオ
デンゼル・ワシントンの商品一覧

この記事を書いた人

天元ココ
天元ココ著者
オリオン座近くで燃えた宇宙船やタンホイザーゲートのオーロラ、そんな人間には信じられぬものを見せてくれるような映画が好き。
映画を見ない人さえ見る、全米が泣いた感動大作は他人にまかせた。
誰も知らないマイナーSFやB級ホラーは私にまかせてください。
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