「ザ・マペッツ2/ワールド・ツアー」で映画興行が変わる?
日本では不遇なマペット一座
「ザ・マペッツ2/ワールド・ツアー」は2011年に製作された「ザ・マペッツ」の続編なのだが、これが劇場公開される日が来ようとは思わなかった。日本ではマペットはほとんど知られていないに近く、当然、人気もアメリカほどではないからだ。そういうと、「セサミ・ストリート」のビッグバードやエルモのグッズはいっぱい出ているし、USJにはアトラクションもあって大人気だ、という声が返ってきそうだが、そう思われること自体がマペットの不幸なのだ。
ここでいうマペットは、アメリカのバラエティである「マペット・ショー」や「マペット放送局」で活躍したマペット一座「ザ・マペッツ」の連中のことなのだ。エルモはマペットだが、英語でいうマペット・キャラクターであって、ザ・マペッツというバラエティ・ショーの一座ではない。「セサミ・ストリート」も「ザ・マペッツ」もマペット・キャラクターを使った番組だが、現在は「セサミ・ストリート」はセサミ・ワークショップ、「ザ・マペッツ」はディズニーと制作会社も分かれてしまっている。
ディズニーによる買収が行われる以前には、ザ・マペッツ一座の映画は劇場公開もされずにビデオ・スルーでお茶を濁していたが、まあ、それも無理ではないところがあった。可愛い人形劇のスタイルで皮肉や辛らつなジョークをとばす、というスタイルは日本向けではない気がするし、そのジョークもアメリカの世相に通じてないとわからないものが多い。
ディズニーのおかげで劇場公開
そんなザ・マペッツの不遇な歴史に光明が差したのは、ディズニーが権利を獲得してから初になる劇場版「ザ・マペッツ」が日本でも公開された時で、ディズニーによる大宣伝、全国公開、そしてパンフレットまで販売! というかつてなかった扱いに「さすがディズニー様よ」とマペッツ・ファンは狂喜したのである。しかし、世界的には大ヒットしたものの「ザ・マペッツ」は日本では記録的な大コケとなり、続編が作られても日本ではビデオ・スルーだろうと諦めていたのである。ところが、ここへ来て館数は2館ながら、まさかの劇場公開である。
5000万ドルをかけた中規模予算の映画なので、上映権もそれなりのはずで、2館ではとうていペイしないだろうと思うのだが、どうもその秘密は映画公開と同時にオンデマンド配信するという新しいビジネス・スタイルにあるようだ。
WEB上にアップされた映画をパソコンやスマートフォンで見るオンデマンド配信は、レンタルビデオ店がどこにでもある日本ではいまひとつだが、それの突破口として映画封切と同時配信という手段はあると思う。ただ、それを本格的にやると映画館の収入に響くので、潜在的人気があるけれど全国公開は無理という「ザ・マペッツ2/ワールド・ツアー」をテストケースとしてやってみるということなのではないか。劇場公開すればメディアへの露出が段違いに多くなり、宣伝費だと思えば配給収入が赤字でも構わない。
理屈はいらない、前作さえ見ていれば
まあ、このへんは憶測だが、マペッツ・ファンにとっては「ザ・マペッツ2/ワールド・ツアー」がスクリーンで見られるということだけでかまわない。お話もどうでもいいかもしれない、いつも通りのヌケヌケとしたミュージカル巨編だから。
そうそう、「ザ・マペッツ2/ワールド・ツアー」は、「ザ・マペッツ」の“文字通りの”“完璧な”“これ以上はない”続編だった。これから見るという人は、必ず「ザ・マペッツ」をおさらいしてから見られんことを。
キャスト
監督:ジェームズ・ボビン
脚本:ジェイソン・シーゲル、ニコラス・ストーラー
キャスト:リッキー・ジャーヴェイス
タイ・バレル
ティナ・フェイ
この記事を書いた人
- オリオン座近くで燃えた宇宙船やタンホイザーゲートのオーロラ、そんな人間には信じられぬものを見せてくれるような映画が好き。
映画を見ない人さえ見る、全米が泣いた感動大作は他人にまかせた。
誰も知らないマイナーSFやB級ホラーは私にまかせてください。
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