【6点】「NY心霊捜査官」は邦題で損をした

NY心霊捜査官

凄そうなホラー映画とみんなが思った

この邦題にあの予告編。そしてダメ押しのR-18指定。三拍子揃ったホラー映画フラグのおかげで、上映前から見る人と見ない人が完全に二分されてしまったようだ。
見る人は、もちろんホラー好き。エロではなくホラーで18禁といえばロブ・ゾンビ版「ハロウィンII」「ホステル」「ムカデ人間2」「屋敷女」のレベルである。そりゃ凄いや。どんな凄いホラーだろうかと期待に胸轟かせて見に行っただろう。
見ない人は、もちろんホラー嫌い。予告編だけで、血みどろ、内臓、呪い、祟り、といったキーワードが頭に浮かんで、最初から拒否だったろう。
残念、どっちも正解ではなかった。

意外や古典的エクソシストもの

ホラー好きが期待し、ホラー嫌いが敬遠したような残虐シーンは、ほとんど……いや、たいしてない。
この映画はホラーには違いないが、血が飛びちるスプラッターや観客を脅かすことが目的のショッカーの類ではない。冷静に考えれば、ジェリー・ブラッカイマーがそんなマニアックな映画を作るはずもないのである。
原題の「Deliver Us from Evil(われらを悪より救い給え)」が聖書の主の祈りの一節であることからもわかるように、これは非常にキリスト教的な、神と悪魔にまつわるオカルト映画なのだ。
R-18指定になったのは、子供への危害を表すシーンが2か所ばかりあったせいではないかと思う。それにしたって、ほんの一瞬のことだ。
原作であるラルフ・サーキの手記「Beware the Night(夜を恐れよ)」は、10年以上前に邦訳されているのだが、その邦題「エクソシスト・コップ」の方が、はるかに当を得ている。

まさかのバディ・ムービー、しかも良作

イラク戦争で古代メソポタミアの悪霊に憑依された兵士が、ニューヨークに悪霊が出てくる出口を開こうと、次々に周囲の人間を下僕化していく。その企みを阻止するのが、霊感が強くてやたら事件に巻き込まれてしまう警官と、ドラッグ、酒、姦淫と破戒の限りを尽くして来た神父のコンビ。
海外ドラマだったら見てみようかという気になるような設定ではないか。これはまさに「エクソシスト」のような古典的オカルト映画の系譜に属する映画なのだ。
エクソシスト・コンビのバディ・ムービーという点では「ゴースト・エージェント/R.I.P.D」のシリアス版と言ってもいい。
霊感の強い警官役のエリック・バナは家族と仕事のはざまでぐちぐちと悩んでいるのでいまひとつなのだが、破戒神父役のエドガー・ラミレスのエクソシストぶりはカッコいい。
「エクソシスト」や「ポルターガイスト」といった映画が大ヒットした歴史を見ても、悪霊払いものは血みどろ内臓グチャグチャスプラッター系より、はるかに一般に受け入れられやすい。
この映画も、「痛快オカルト・アクション『エクソシスト・コップ』」的な路線で売った方が正解だったのではないかと思う。
【6点/10点】

キャスト

監督:スコット・デリクソン
製作:ジェリー・ブラッカイマー
主なキャスト
エリック・バナ
エドガー・ラミレス
オリビア・マン
クリス・コイ
ドリアン・ミシック

この記事を書いた人

天元ココ
天元ココ著者
オリオン座近くで燃えた宇宙船やタンホイザーゲートのオーロラ、そんな人間には信じられぬものを見せてくれるような映画が好き。
映画を見ない人さえ見る、全米が泣いた感動大作は他人にまかせた。
誰も知らないマイナーSFやB級ホラーは私にまかせてください。
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