「フルスロットル」はポール・ウォーカーの最後の主演作
「アルティメット」のリメイク
最近の予告篇は浜村淳の映画解説並みにネタバレが激しすぎて、ラストまで出してしまうものがある。そのため、見ると決めた映画は目を閉じ、耳を塞いでやり過ごすようにしている。おかげで、マッチョなダスティン・ホフマンみたいなリノという男が走り出すまで、この映画がリュック・ベッソン製作・脚本の「アルティメット」のリメイクとは気づかなかった。
もちろん、そのリノは超人的トレーニング「パルクール」の家元的存在ダヴィッド・ベルだったのである。「ヤマカシ」や「アルティメット」に出ていたころから数えて10年以上経つのでもう四十路のはずだが、相変わらず体のキレは素晴らしい。
ダヴィッド・ベルの神業は健在
ダヴィッド・ベルがジャンプして壁を蹴って天井のすき間にスルッと入っていくところなど、スーパーマリオの実写版を見ているようだ。実写版「スーパーマリオ」も、体形でボブ・ホスキンスを選んだのが間違いで、こういうマリオみたいに動ける人で作ればよかったのだ。
ただ、もう一人の主役のポール・ウォーカーがベルほど動けるわけではないためか、カット割りやアップでそれらしく見せている部分が多い。まあ、それ自体はアメコミの止め絵のように迫力を増す結果にもなっているので悪くはないのだが、バランス上なのか、ベルのシーンもカットつなぎが多くなっていたのは残念なところ。
これは「アルティメット」の時にも感じたのだが、ジャッキー・チェンの映画のようにロングで撮って、ワイヤーもマットもトランポリンもなにもなしにジャンプしてます、というところを見せた方がよかったような気がする。
特にCGでなんでもできる(と思われている)昨今では、なかなかパルクールの凄さが伝わらない気がする。
ポール・ウォーカーはカースタント担当
こう書くとポール・ウォーカーの出番がないように聞こえるかもしれないが、そんなことはない。
ベルの相棒をウォーカーにしたのは、もちろんカーチェイスでの妙技を見せるためで、車のシーンになると二人の立場が入れ替わる。爆走する前に「安全ベルトをしろ」とウォーカーに言われたベルが「束縛されるのは嫌いだ」などと言っていたのに、途中からしっかりベルトをしていたあたりはなかなか楽しい。
ポール・ウォーカーの遺作としてはちょっと軽いかなと思っていたのだが、見終わってみれば、このコンビで続編が見たかったと改めて彼の死を惜しむ気持ちが増したので、これはこれでよかったように思う。
ラストはいかにもベッソンらしいアメコミ的いい加減さなのだが、この作品にあれこれツッこむのはそれこそ野暮というものだろう。
キャスト
ポール・ウォーカー
ダビッド・ベル
RZA
カタリーナ・ドゥニ
この記事を書いた人
- オリオン座近くで燃えた宇宙船やタンホイザーゲートのオーロラ、そんな人間には信じられぬものを見せてくれるような映画が好き。
映画を見ない人さえ見る、全米が泣いた感動大作は他人にまかせた。
誰も知らないマイナーSFやB級ホラーは私にまかせてください。
最新記事
- 2014.12.09アクション【7点】」「ヘラクレス」、ヘラクレスそしてヘラクレス
- 2014.12.07ドラマ【6点】「イヴ・サンローラン」の主役は天才を支える苦労人
- 2014.11.29SF【8点】「パシフィック・リム」は終わらない・秋のパシリム祭り
- 2014.11.24ドラマ【8点】「ジャージー・ボーイズ」はアメリカの時代描写のセンスが抜群
スポンサーリンク