『大統領の執事の涙』7代のアメリカ大統領に仕えた男の物語
お家で映画鑑賞『大統領の執事の涙』
あらすじ・レビュー
実在の黒人執事の手記を元に描かれた作品。
主人公のセシル(フォレスト・ウィテカー)はコットン畑の奴隷として生まれるが、1人で生きていくことを決意し、逃げるように飛び出していく。
ホテルで職を見つけ、見習いアルバイトから、ボーイになり、そして、運よく大統領の執事に推薦される。そしてそこから約30年にわたって、歴代7人のアメリカ大統領に仕えることとなる。
セシルは大統領の優秀な執事として、『給仕をしているときには、その部屋の空気のような存在でいること』に徹する。
自分を押し殺し、主人に仕えるということは、長きにわたって、奴隷として生きてきた黒人にはぴったりの仕事だったのかもしれない。セシルは自分が生きていくため、そして、家族を養っていくため、あえて「闘わない」ことを選択した。
しかし、一方で、家族には白人に仕えることに反発するものもいた。長男は反政府活動に力を注ぎ、二男はベトナム戦争へと出向いていく。闘わないことを選んだ父親と、立ち向かっていくことを選んだ息子たち。黒人VS白人というだけでなく、家族間、世代間での対立、これはアメリカの歴史を語るうえで、避けては通れない問題なのだ。
ちょっと話はそれるが、登場する歴代大統領を演じている俳優がかなり豪華である。大統領ものって、ムリに似せようとへんな小細工(メイクなど)を施すものだけど、この映画ではその傾向があまり見られない。特に、ニクソン大統領のジョン・キューザックの登場には、「え?どなたですか?テロップでないとわかりません」と思ったほど。こんなにやわらかいイメージのニクソン大統領は今まで演じられてこなかったのではないだろうか。
まとめ
黒人の権利がことごとく踏みにじられながらも、危険を承知で立ち向かっていく仲間たちの姿を目にしながら、最高権力者、しかも、白人の傍で空気のように従順に仕える。それってどんな気持ちだったのだろうと胸が痛む。すぐそばに最高権力者がいるのです。言おうと思えば、意見は耳に入れることはできるのです。『大統領、わたくしの仲間を助けてください。』といつでも訴えられる状況ではあったはずなのです。実際、仕事熱心なセシルを信頼しきって、声をかけてくる大統領もいた訳ですから。しかし、セシルは従順に、忠実に、自分のやるべきことだけを全うするのです。
でも彼のその姿がもしかしたら、歴代の大統領に無言の訴えとなって、どこかで意識の改革をするきっかけにはなっていたのではないのかなと思えてなりません。
そして、そんな闘わないことを選んだセシルにも変化のときが訪れます。
息子に語りかけたひとこと。「お前を失った」。その言葉とともに、セシルはまた新たな闘い、新たな時代へと踏み出していくのでした。
(HaLu)
キャスト
フォレスト・ウィテカー
オプラ・ウィンフリー
マライア・キャリー
ジョン・キューザック
ジェーン・フォンダ
キューバ・グッディング・Jr.
この記事を書いた人
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