「華麗なるギャツビー 2013」~ディカプリオ祭り

華麗なるギャツビー

謎の男ギャツビー

1922年夏、ニューヨーク郊外ロングアイランドのウェスト・エッグで夜ごと繰り広げられる大パーティー。あふれる食べ物、飲み物、ビッグバンドにダンサー達。主催者の名はギャツビー。
着飾って集まってくる人々の誰も、その男の正体を知りません。
「ドイツ皇帝のいとこで、お金はそこから出ているらしい」「人を殺したこともあるらしい」「戦争中はスパイだった」などの噂にまみれ、しかもパーティーにはほとんど顔を出さない様子。
いったいこのどんちゃん騒ぎの目的は何なのでしょう?

隣家に住む独身男ニック・キャラウェイの元に、ある日パーティーへの招待状が届きます。実は招待状を持っているのは彼ひとり。次第にギャツビーの謎に近づいていくことになるのです。

そして映画開始から30分、ビッグバンドが奏でるガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」のクライマックスと共に、ディカプリオ演じるギャツビーの登場です。自信の奥に不安と緊張をのぞかせ、紳士的態度とギラギラした野望を併せ持つディカプリオならではのギャツビーです。
(中には1974年版のロバート・レッドフォードの方が好きと言う方もいらっしゃると思いますが、ちょっとお行儀が良すぎて私はゾクゾクできないのです。ちなみにニック・キャラウェイ役は、トビー・マグワイアよりも1974年版のサム・ウォーターストーンの方がおとなしい感じが出ていて適役だったように思います)

対岸の灯

ウェスト・エッグの対岸に湾をへだてて見えるのは、高級住宅地イースト・エッグ。そこに暮らしているのは、ニックのまたいとこデイジーとその夫トム・ブキャナン。ブキャナン一家はきわめて裕福で、金遣いの荒さは有名です。しかもトムは堂々と愛人を囲い、その態度は傲慢そのもの。
そしてデイジーは、愛らしさとはかなさで人を虜にさせずには置かない良家の花です。

湾に面したブキャナン家の桟橋の先端に灯る緑色の光を、対岸から見つめ手を差し延べる男がいます。ギャツビーでした。
さてその先は実際に映画を観ていただきましょう。物語が進むにつれ、ギャツビーのド派手な演出の裏に潜む真の目的とまっすぐな思い、出自の秘密が明らかにされ、胸を熱くすることでしょう。

それにしても、ああゼルダ。「女は美しくおバカに育つのが一番」という価値観で生きる女が結局頼るのは男の財力で、それが真実の愛かなんてどうでもいいのですね。
成り上がり者のギャツビーがトムに侮辱されてものすごい剣幕で怒る形相に、ただただ引くばかりのゼルダなのです。

そして悲劇は起こった

1922年のニューヨークは、第1次世界大戦後の好景気に沸いていました。それはとてつもない金持ちを生む一方で、依然として人種差別や階層間の断絶が色濃く残っており、男と女の間にも深い溝がありました。

ギャツビーの見果てぬ夢は、それを温めている間にすでに終わっていたのです。

最後に原作の中で私が一番感動した所をご紹介しましょう。なぜかこの映画では省かれていたのですが。
ギャツビーの葬儀に故郷の町ミネソタから父親がやってきました。一冊の本を携えて。その裏表紙に書かれていたギャツビーの子供時代のメモ書きです。
「スケジュール
 起床               午前6時
 ダンベル体操と壁登り       午前6時15分~6時30分
 電気などを勉強          午前7時15分~8時15分
 仕事               午前8時30分~午後4時30分
 野球などスポーツ         午後4時30分~5時
 演説の練習、風格を身につける   午後5時~6時
 有用な発明について勉強する    午後7時~9時
 

その他の決意

 『シャフターズ』や『・・・・・』(名前は判読できない)で時間を無駄にしないこと。
 巻き煙草、噛み煙草はもうやめる。
 1日おきに風呂に入る。
 有益な本か雑誌を週に1冊は読む。
 週に3ドル(5ドルとあったのが消されている)貯金する。
 両親にもっと良くする。                             」

どうでしょう。好奇心や向上心にあふれ、まっすぐな意欲を持つ男の子の姿が浮かび上がりますね。結局は金持ち達に蹂躙されてしまうことを思うと、ますます泣けてきます。

でもこの映画は、原作にない演出上のプレゼントをギャツビーにしています。
ゼルダからの電話を待ちながらプールで泳いでいたギャツビーは、ベルが鳴ったのを聞いてそれがゼルダからだと思います。銃弾に貫かれる間際のギャツビーの瞳には、喜びと希望の光が射し青い空が映っていました。
(実際には、彼を心配したニック・キャラウェイがかけたものだったのですが・・・)

スタッフ・キャスト

監督 バズ・ラーマン

レオナルド・ディカプリオ 
トビー・マグワイア 
キャリー・マリガン 
ジョエル・エドガートン 
アイラ・フィッシャー 

この記事を書いた人

くりちゃん
くりちゃん著者
映画を見たり、本を読んだり、音楽を聴いて気ままに暮らし、ときどきこうしてレビューなんぞが書けたら最高。酸いも甘いもかみ分けた大人のレビューが書けるといいなあ。
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